情報誌 F-ACT(ファクト)

(公財)ふくい産業支援センターは、情報誌「F-ACT(ファクト)」を奇数月25日に発行しています。 F-ACTでは、企業の方の関心が高い経営課題や、昨今話題となっている経済トピックス等を取り上げ、先進事例や使える施策情報などを紹介しています。 F-ACTを活用し、企業経営のヒントを見出すとともに、皆さまのモチベーションアップにつなげてください。

クマンドウウィークのご案内

クマンドウウィークのご案内
F-ACT8月号でもご紹介したクマンドウウィーク。デジタル化の “いま” を紹介するイベントです。企業経営者や創業予定者の方には新たなビジネスのヒントを、企業等で働く従業員の方や次代を担う子供たちにはデジタルツールを楽しく体験していただく4日間です。[参加無料]
特設サイトはこちら!
 

 
会 期:令和5年9月7日(木)~10日(日)の4日間
9月7日・8日 「ビジネスSIDE」
経営者や業務としてITを活用される方がビジネスに役立つデジタル技術を学べる場をご提供します。
9月9日・10日 「おもしろSIDE」
一般・学生の方や親子で参加される方に、楽しくデジタル化に触れていただけるイベントを開催します。
会  場 福井県産業情報センター
(福井県坂井市丸岡町熊堂3-7-1-16)
 
イベント盛りだくさんで開催しますので、ぜひご参加ください!
特設サイトはこちら!

よろず支援拠点コーディネーター座談会(フルバージョン)

よろず支援拠点コーディネーター座談会
~商品開発のポイントを探る~(フルバージョン)

F-ACTVol.59「デザイン思考・商品開発のポイントを探る」を特集するにあたり、
企業経営の相談窓口「福井県よろず支援拠点」のコーディネーター3名による座談会を開催しました。
日ごろの相談対応での感触を基に、商品開発のポイントや気を付けたい点などをお話いただきました。



[参加者]福井県よろず支援拠点コーディネーター3名
(写真右から)
■サブチーフコーディネーター
Vivace 代表 酒井 恒了(さかい・つねのり)氏
■サブチーフコーディネーター
NECO・no・Teエンジニア株式会社
代表取締役 岩堀 圭吾(いわほり・けいご)氏
■コーディネーター
グラフィックデザイン晴れのひ。
代表 水野 美紀(みずの・みき)氏

※経歴等は
福井県よろず支援拠点のサイト
でご確認ください。

―商品開発を行う際のポイントを教えてください。

酒井氏:まず、自社の得意なことをやることが大事です。強みを活かす方が良い商品を作れますし、苦手なことで商品づくりをすると思い入れも入りません。今までやったことがないことにチャレンジするのはリスクが大きいという認識を持つ必要があります。また、「福井だから恐竜を付けた」というだけで売れる訳ではなく、買い手からみてよい商品でなければ売れません。買い手の目線で、どのような商品が欲しいかを考えることが重要です。

岩堀氏:自社がやってきたことの延長で商品開発を考えてしまうのも危険です。自社が積み重ねてきた技術で作った「良い商品」というのは、主語が自社になってしまっていますから。

水野氏:消費者が見えていなくて、自分たちの思いだけで作ってしまったと感じるご相談もありますね。例えば、誰に買ってもらいたい商品かを尋ねると「みんなに売れる商品にしたい」と言われたり、明確なターゲットが返ってこなかったりというパターンも多いのですが、誰に向けての商品で誰が買うのかを意識して開発することが大切なんです。

岩堀氏:ターゲットの設定という点で言うと、「20代~30代の女性」といった設定では絞り切れていないですよね。21歳と39歳ではライフスタイルも違うはずですから…。

水野氏:更に踏み込むと、同じ21歳の女性でも趣味嗜好は違うはずです。ターゲットとする具体的な人物像を思い描くこと(ペルソナ設定)は面倒ですが、どういう人に届けるのかを絞り込むことで売り出し方も変わってくるはずなので、しっかりと考えたいですね。

岩堀氏:ペルソナを考えるときには、根拠のない設定をしないように注意が必要です。現実には存在しないような都合の良い人物像を作り上げてしまうこともありますので、可能なら実際にいる身近な方から考えていくと良いかと思います。

酒井氏:そこまで考えている企業は少ない印象です。ターゲットを絞り込んでいくとマーケットが狭くなり、儲からないと考えてしまいがちですが、スマートフォンでさえ機種によってターゲットは違います。
大企業でも皆が使うモノを作るのは難しい。中小企業だからこそ、ターゲットを絞り込んで商品開発を行うことを心掛けるべきです。
具体的に希望売上額などの数字から逆算すると良いかもしれないですね。絞り込んだ市場でも十分な規模であることがわかりますから。

岩堀氏:マーケティングをしっかりやることはもちろん大切ですが、強みを磨く技術開発も必要です。これまでは、自社内で技術を完結させることが大事と考えるメーカーが多かったのですが、人材の流動性が高くなり難しくなっています。
自社でやるべきところと、他社でやってもらうところを分けることが重要で、コアとなる技術を残して協業していくことを考えないといけません。全てを自社で完結させることは大企業でなければ難しいです。
また、少し話は変わりますが、技術はコモディティ化(一般化)しています。作れるもののレベルが底上げされているので、そこから自社が尖らせることのできる技術を見つけることが大事だと思います。

酒井氏:そうですね。お金さえかければ、機械でそこそこできてしまう時代です。「社長のところしかできないことはありますか」と聞いても気づいていない場合も多い。また、分かっていても、次の強みが見つけられない場合はつらい。目先の仕事に追われて先送りせずに、意図的に次の強みを作っていくことが大切です。

岩堀氏:デザイン戦略や技術開発戦略も同じですよね。昔は技術を磨けば、良いものを作れば買ってくれた。もう、そのような時代ではなくなってずいぶん経ちます。

酒井氏:すごい技術を見つけましたと言って、探したらその技術が既にあったということは多い。革新的なものを狙うより、少し違うものを出していくという努力が必要です。そのためには得意分野の絞り込みをしっかりと行って、そこで尖ったものを広げていくのが良いですね。

―商品名を決める上で注意点などはありますか。

酒井氏:商品名を考えた後に商標を調べてみると、関連する商標をすべて押さえられていたというケースも多くあります。良い商品名を思い付いたら、しっかりと商標を調査することが重要です。

岩堀氏:商標権の心配はどうしてもついて回ります。商標登録は早い者勝ちなので、調査を行って保険的に商標を権利として持っておくことも必要かもしれません。

酒井氏:費用もそこまで高額ではないから、取っておくのが良いと思います。

岩堀氏:後々面倒になるのであれば、取るべきですね。ただ、商標の機能は名前への信用やあの会社が作っているものと分かること。誰でも使える名前は商標としての機能はありません。商標権を取れるから商品名にするのではなく、商標の役割の一つである商品のイメージが伝わり、その商品の出所を表すことができる商品名をしっかりと考えたいですね。商標登録はそのあとに考えれば良い。

水野氏:商品の特徴を起点に商品名を考えるという方法もあります。消費者に特徴が伝わると受け入れられやすいですし、商品の機能や形状などで一番のポイントとなるものを商品名に反映させるのも良いと思います。逆に専門用語を使うと、伝わりづらくなることもある。

酒井氏:越前~、若狭~といった商品名や、方言をもじったものを商品名にすると、伝わりづらくなってしまうこともあります。特に、方言を使った商品名は県外の方には伝わらない場合もあるし、ダジャレでネーミングは難しい(笑)。地名を安易に使うのも危険です。ここでも、誰に買ってもらいたいものなのかということを意識しなければいけません。

岩堀氏:名前にはひとひねりが必要。商標権が取れないということは一ひねりが足りていないということでもあります。少し考えて想起できるくらいが、頭に残るネーミングになると思いますよ。

-パッケージや包装はどのように考えれば良いですか。

酒井氏:お土産品の場合で考えると、会社への出張土産であれば10個~20個入りで個包装されているものが良いでしょうし、自家用なら個包装でなくても良いでしょう。ご近所やお友達への手土産だと箱入りの見栄えのするパッケージが喜ばれそうです。このように、お土産品も誰が何のために買うかでパッケージの形状も変わってくる。商品開発を行う際にこうした分類をする必要性もなかなか気づきづらいのですが、やはり誰に買ってもらいたいものなのかを明確にし、立場を入れ替えることができるか、客観的に見ることができるかが非常に重要ということです。その上で、売り場で目を引くデザインが活きてくる。

水野氏:商品になる以上、店舗に陳列されます。陳列されたときにパッケージが他社と差別化されているかということはもちろん、店舗や自社が取り扱いしやすいように、陳列・在庫管理がしやすくなっているか、といったところも考えて最終的な形状に落とし込んでいかないと、取り扱いしづらいということになってしまうので、そこまで考えていかないといけないです。

岩堀氏:什器もしっかりと考えるとかですね。
また、ブランドのアイデンティティも大切だと思いますよ。個々の商品ネームやパッケージを一生懸命考えても、全体としてバラバラになってしまうと、自社のブランドが認知されにくくなってしまいます。



― これまでのお話で「顧客視点」を持つことが重要だと感じました。

酒井氏:そうですね。例えば、健康志向の商品では女性がターゲットになってくるものが多いのですが、男性だけでデザインや商品を考えていても良いものは出てこない。あるご支援先では、女性の担当者が「私は買わない」といったものはボツにしていってヒット商品を開発した例があります。誰が買うのかをしっかりと考えること。買う人の情報・意見をインプットしなければいけません。その場合に友達に聞くというのも危険です。本当にお金を払って買ってくれる人でなければ意味がない。だからこそ、誰に何を聞くかが非常に大切です。専門家に聞くのも客観視してくれるという意味では良いかもしれません。

岩堀氏:販売までに卸売業者や販売店が絡むことも多いですよね。そういった場合、販売店やバイヤーの意見も重要です。ただし、注意したいのはやりとりの中で他社商品を比較に出されたとしても、同じような仕様で安く作ろうと考えないことです。低価格競争に巻き込まれることは中小企業にとっては避けたい状況。バイヤーの意見をそのまま仕様に反映するのではなく、バイヤーの意見の本質をとらえて、その先のエンドユーザーのベネフィットを考えた仕様や機能を検討することが重要です。

酒井氏:卸売業者等が絡む場合も実際に店舗を訪ねて、どのように売られているか、どんな反応があるかを見てみると参考になります。こんな反応があったのでこういうことをやりましょうということも言える。結局、店舗で売れなければ卸売業者等も扱いづらい訳ですから。
これは最終商品に限った話ではなく、例えば、製造業では、図面・納期・価格を出してくれれば仕様どおりに部品を作りますよというところも多い。こうなると、自社の得意技が分からなくなる。その先の、この部品はどういう役割・機能を持っていてどんなものに使用されているか、なぜ自社に依頼が来ているのかが分かると自社の強みを知ることができます。強みが把握できれば、自ら発信して受注を取りにいくことができるようになるはずです。発信しないし、発信するべきコアな技術が分かっていないというのはもったいない。

水野氏:会社も人も同じかもしれませんね。「自分も他人も知っている自分」以外に、「自分だけが知っている自分」「他人だけが知っている自分」「自分も他人も知らない自分」がいると言われますが、企業も似ているように感じます。

酒井氏:ジョハリの窓という考え方ですね。その中で、「他人が知らない自分」は、自分で情報発信すればいい訳ですから。一方で「自分の知らない自分」を知るためには、他人に聞くしかないですし、そういったことを重ねて「自分も他人も知らない自分」を発見していくことが必要だし、大切だと思います。話を商品開発に戻すと、売上の数字は非情です。数字を追って原因をしっかりと考えていかなければいけない中で、経営者の考えで決めるのではなく、どうすれば売れるかは消費者に聞かなければ分からない。また、まず1回目に買ってもらうためには、パッケージやデザインが大事なのですが、2回目に繋げるためには品質が大事になってきます。

岩堀氏:工業製品の品質の考え方に、マスト、ベター、デライトの3つの品質の「デライトデザイン」というのがあります。マストな品質は絶対に備えていなければならない品質。ベターな品質は他社と比べて品質が優れている部分なのですが、ベターな品質ではリピートは来づらい。デライトな品質は驚きがある品質のことで、このデライトな品質を狙うことでリピートを獲得できることになります。

酒井氏:発注者の図面はマストな品質を求めてくる。そこにベターな品質やデライトな品質を捉えた提案ができると、発注者にとってなくてならない存在になっていける訳ですね。自社では平然とやっていることも他から見ると凄いことであることも多い。どの製品のどの部分に使われているのかを知ることで、そうした部分を発信していけるし、強みを発見できるので、そうした意味でもお客様のところに興味を持つことが重要です。

― 最後に、今回の特集で取り上げた企業が商品開発に活用したデザインアカデミーとよろず支援拠点についてご紹介をお願いします。

酒井氏:相談を受ける側としては、お考えのことをやってしまう前に来ていただくことをお願いしたいです。よろず支援拠点には技術的な部分が分かるコーディネーターもいますし、販路拡大のご相談にお応えできるコーディネーターもいます。構想もしくは妄想の段階から相談にきていただけると、こちらもワクワクするし、助言もしやすいので、形にする前に、思いついた時に、よろず支援拠点に相談してください。無料で何度でも相談に対応できます。

水野氏:自社のデザイン力向上には『福井デザインアカデミー ブランディング&商品開発講座』がお勧めです。全12回、心を動かす商品やサービスを構想するための考え方を学ぶ講座です。ただし、福井デザインアカデミーで商品の企画ができて社内に戻っても、通常の業務に追われて時間が取れなかったりと、商品化に至らないというケースもあります。そういった場合によろず支援拠点で完成までサポートしていけますので、アカデミーとよろず支援拠点は商品化支援の両輪だと思っています。専門家が寄り添うことで、開発を進めやすくなるというところもあると思いますので、お気軽にご相談ください。

F-ACT(ファクト)とは

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(公財)ふくい産業支援センターでは、情報誌『F-ACT(ファクト)』を発行しています。
名称には、先をゆく(Advanced)福井(Fukui)の企業(Companies’)の挑戦(Try)を応援したい、という想いを込めています。
企業の方の関心が高い経営課題や、昨今話題となっている経済トピックス等を取り上げ、先進事例や使える施策情報などを紹介していきます。企業経営のヒントを見出していただくとともに、皆さまのモチベーションアップにつなげていただける情報誌をめざします。
配布は無料です。
講読をご希望の方は、申込みフォームからお申し込みください。
また、誌面情報は、F-ACTの公式ホームページにおいても公開します。
併せてご活用ください。
F-ACTの特長
◆豊富な企業事例
新分野や経営革新などに積極的に取り組む企業をたくさん紹介します。
◆充実した特集
経済、経営、ビジネスで話題にあがっているテーマを掘り下げて紹介し、トレンドな情報や企業事例とともに、ビジネス向上に導くヒントをお届けします。
◆経営者はもとより、従業員の方にも役立つ情報を紹介
商品の開発から完成に至る企業のストーリーを紹介する「完成への道のり」や、当支援センターの施策を活かし事業を前進させる企業を取材する「今月の注目企業」など、従業員から経営者まで、幅広い方に興味をもっていただける情報を掲載します。
F-ACTの概要
発行日
奇数月25日頃発行(隔月発行)
発行部数
3,400部
発行先
県内企業・組合、県各部署・出先機関、業界団体、県内各産業支援団体、県内金融機関各支店、勝木書店 他
ページ数
22ページ(表紙・裏表紙除く)
構成
タイムリーな経済経営関連のトピックス、企業事例、企業経営に役立つ連載記事
各種情報(新聞記事、公的支援施策等) など
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